男の着物は紬がかっこいい|やっぱり紬をお薦めする理由

投稿日: カテゴリー 着物


着物には色々な種類がありますが、その中で男の着物に絞るとある程度限られてきます。その男着物の中でよく耳にしてそしてよく着られている「紬」という着物について思うことを書いてみます。

紬とは

まず簡単に紬の説明をしておきます。
着物の世界では絹のことを「正絹/しょうけん」という言い方をします。
紬とは正絹の着物で正絹の着物の中の一つの種類です。

男性の着物で正絹といえば大きく分けて「紬」と「お召」になります。
お召はフォーマル寄りで紬はカジュアル寄りです。

・紬は絹の中ではカジュアル

カジュアルと言いましても正絹の着物ですから、正絹の着物の中ではカジュアルですが、
木綿や浴衣のようなカジュアルではありません。

ニュアンスを伝えるのが難しい部分もあるのですが、何となくでもわかっていただければよいと思います。

従来紬は真綿から手で紡いで作った糸から作っていました。
手作業で紡いでいた糸なので均一性がなくて、真綿のほっこりした温かみがあります。

現在も昔ながらの手作業の本物の紬もあります。そういう紬は時代の流れと共に生産数は少なくなってきています。

一般的には綺麗な糸だけでなく節があるような紬糸を混ぜて織っている着物を紬と呼んでいます。

「ただ綺麗な生地」ではなく「節などがあり味がある生地」ということです。

・実は紬にも色々な種類がある

実際は紬でも色々な表情の素材がありますので一概に「紬だからどうのこうのと一言で片付けるのは難しいです。
個人的には紬をさらに細分化して呼び方を変えればもう少し分かりやすく伝えやすくなると考えています。

見て触って着てそれぞれの違いを各々の感性で感じることが大事だと思います。

・紬を結婚式で着ることについて

よく「紬は結婚式に着ていけない」という話がありますが、個人的にそれは正解でもあり不正解でもあると考えています。

ウェディングの中にはカジュアルなウェディングもありますし、紬の中にはドレッシーな雰囲気を醸し出すものもあるからです。
洋服で参列の方々が礼服ではなくただ普通のスーツを正装っぽく着ているだけなのに、なんで着物を着る人たちには礼装を求めるのでしょうか?

着物で参列の方と洋服で参列の方が同じようなレベルでいいのならば、正装っぽく紬を着こなせれば結婚式にも対応できると個人的には考えます。

 

紬をおすすめしたい理由

やっぱり絹が一番着やすいです。私は着物を生業としていますので、絹、ウール、木綿、麻、ポリエステル、などなど色々と仕事半分、趣味半分の気持ちで
着比べてきました。その結果、生地がシャープで裾捌きの良い正絹の着物がやはり一番着やすく心地がいいのです。
感覚には個人差がありますので反論は認めます!

絹が着やすいからと言って、絹だけをお薦めしたい訳ではありません。洋服と同じように使い分けていただくのがベターです。

例えば家の中で絹は必要ないでしょうから室内着は木綿にするとか、真夏に汗だくになるのに絹は洗いずらいから麻にするとか、ですね。

そんな中でどんなシーンにも万能な「紬」もお薦めしたいのです。

着やすいだけではなく、素材の高級感や、手間暇をかけている生地の立体感や
真綿紬の素朴な感じ、長く付き合うことによって出てくる深み、味などやっぱり「紬」は面白いからお薦めしたいですよ。

あるお客様の話です

最初の頃私は上記の理由で紬の着物をおススメしましたが、お客様はウールのリサイクル着物を選びました。
何か月かして、今度は紬のリサイクル着物を買っていただきました。また何か月かしてご来店したお客様は言いました。
「もうウールは着てないです。正絹着たらウールは着れないですね」

それ以降10年以上お付き合いをしていますが、そのお客様は春夏は麻、秋冬は絹をベースに着物を揃えているようです。

当店だけではなく他店も回りながら、リサイクルと反物から仕立てとを混ぜて、たまには掘り出し物を見つけて、
掘り出し物を当店に持ち込んで、当店の方で加工や仕立てをしたりと工夫をしながら自分好みの着物を集めていました。
着物生活をマイペースに楽しむお客さまには僕も色々勉強させていただきました。

このお客様以外にも同じような流れで「紬」を愛用している方々がたくさんいます。

ちょっと補足ですが、ウールが全部ダメということではありません。着物の世界のウールは絹に比べて厚ぼったく野暮ったい物が多かったので、
そういうものは絹を着てしまった後には着づらく感じるということです。
しかしながら世の中にはシャープでシルクのような高級ウールもたくさんありますからそういうシャープなウール生地での着物は従来の「ウールの着物」とは違う着やすい着物にもなり得ます。

高級品ばかりではない

紬と言うと大島紬と結城紬が高級品としても紬としても有名ですね。
高級店や百貨店ではとんでもない金額で並んでいると思います。

大島紬は生糸系の着物なのでシャリ感がありツルッと綺麗な着物です。結城紬は真綿系なのでほっこり味のある着物です。
ある意味この二つはは生糸系と真綿系で両極端な着物になります。

この2大産地の着物はもちろん素晴らしいのですが、この中間の生糸系と真綿系の混ざりあった普通の紬も多く作られています。
そしてその普通の紬の中にはお求めやすい金額の紬も多く存在しますので「紬」を選択肢の中に入れていただければ幸いです。

終わりに

しっかりと反物から作った紬を大事にして長く着る。
時間と共に出てくる素材の味もじっくりと味わう。

紬とはそんな付き合い方をしていきたいですね〜


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